切削工具のコストはどう下げる?再研磨と新品交換の考え方
切削工具のコストを下げようとすると、つい「工具を安く買う」ことに目が向きがちです。しかし工具費は、新品の購入価格だけで決まるわけではありません。摩耗した工具を再研磨で再生して使い続けることは、工具費を抑える有力な選択肢になります。
この記事でわかることは次のとおりです。
- 工具コストを「新品価格」ではなく「経済的寿命」で考える視点
- 再研磨・再コーティングが工具費の削減につながる理由
- 高価な工具ほど再研磨で取り戻せる金額が大きい理由と、出すタイミングの考え方
工具コストは新品価格だけで決まらない
切削工具のコストを考えるとき、見落とされがちなのが「工具が使えなくなることで生じる損失」です。工具の価格そのものは加工にかかるコストの一部に過ぎず、刃先が摩耗して交換が必要になると、工具の買い替え費用に加えて、段取り替えの手間や機械の停止時間、仕上げ面の悪化による不良といった損失も発生します。
そのため、工具コストは「1 本いくらで買うか」だけでなく、「1 本の工具をどれだけ価値を保ったまま使い切れるか」という視点で考えるのが基本です。再研磨は、まさにこの「使い切る」を支える手段にあたります。
工具の経済的寿命という考え方
工具の「寿命」は、切削工具が破損・摩耗して使用に耐えなくなるまでの正味の切削時間を指し、生産現場では製品の寸法精度・仕上げ面粗さ・切りくず形状の変化などから判断されます。切削速度と工具寿命の関係は、テイラーの工具寿命式 V・T^n = C(V は切削速度、T は寿命、n・C は切削条件で決まる定数)として古くから知られています。
ここで重要なのが、工具には「物理的寿命」と「経済的寿命」の 2 つの見方がある点です。物理的寿命は工具が物理的に切削できなくなるまでを指すのに対し、経済的寿命は、再研磨費用・工具交換費用・工具代・製品の価値といった要素の兼ね合いで決まります。つまり「まだ削れるか」ではなく「どこまで使えば最も経済的か」という視点です。摩耗量がある限度に達したら再研磨するのが経済的である、という考え方は古くから示されてきました。
再研磨が工具費の削減につながる理由
再研磨とは、切れ味が落ちた工具の刃先を研ぎ直し、摩耗やカケを取り除いてすくい面・逃げ面を付け直すことで、再び使える状態に整える加工です。新品に買い替える代わりに同じ工具を再生して使い続けられるため、工具を摩耗のたびに使い捨てる場合と比べて、工具にかける費用を抑えやすくなります。
工具の状態には、寿命が来た工具を使い続けて加工品質を悪化させる「事後的な対応」と、逆に早すぎる交換で余計な費用をかけてしまうケースの両方があります。だからこそ、摩耗の状態を見ながら「再研磨で再生する」という選択肢を持っておくことが、工具費の最適化につながります。再研磨の基礎全般は切削工具の再研磨 完全ガイドでも解説しています。
再コーティングで寿命を取り戻す
多くの切削工具には、数µm の薄膜をまとわせるコーティングが施されています。コーティングは工具表面の硬度を高め、酸化や被削材との凝着を抑えることで、工具の摩耗を抑制し寿命を延ばす役割を担います。住友電工の技報では、特定の切削条件下でコーティングにより工具寿命が大きく延びた例が報告されており、硬質皮膜(PVD・CVD)の被覆が長寿命化や加工時間の短縮につながることは、公的資料でも整理されています。
再研磨では摩耗した刃先を削り取るため、その部分のコーティングも一緒に失われます。そこで、再研磨後に改めてコーティングを施す「再コーティング(リコート)」をセットで行い、被膜の機能を回復させる運用があります。工具メーカーのなかには、再研磨と再コーティングを一貫して提供しているところもあります。
高価な工具ほど再研磨で取り戻せる金額が大きい
工具材種のなかでも、PCD(多結晶ダイヤモンド)や cBN(立方晶窒化ホウ素)といった高硬度工具は、長寿命・高精度な加工を担う一方で、超硬工具より高価です。深穴加工用のロングドリルや刃長の長いエンドミルなども、材料費が高くなりがちな工具です。
こうした高価な工具を摩耗のたびに新品へ買い替えるのは、コスト面の負担が大きくなります。経済的寿命が工具代と再研磨費用の兼ね合いで決まることをふまえると、1 本あたりの単価が高い工具ほど、廃棄せず再研磨で再生することで取り戻せる金額が大きくなると考えられます。高価で再生する価値の高い工具こそ、再研磨の検討に向いています。PCD・cBN それぞれの特性はPCD工具の再研磨・cBN工具の再研磨で解説しています。
再研磨に出すタイミングの考え方
再研磨でコストメリットを得るには、出すタイミングも大切です。再研磨は摩耗した逃げ面を研ぎ落とす作業のため、欠損のような大きな損傷があると、その分だけ削り取る量も大きくなります。摩耗や欠損が進みすぎる前に出したほうが、削り取る量を抑えやすく、刃先を再生できる範囲を広く保てます。
摩耗が進むと切削力が増大し、仕上げ面の悪化や加工精度の低下につながります。完全に使いつぶしてからではなく、加工品質の変化を目安に、摩耗が進行する前のタイミングで再研磨に出すのが、工具を長く経済的に使うコツです。
PLG再研磨でコストを抑える
PLG再研磨は、名古屋工業大学発の PLG(パルスレーザー研磨)技術を活かし、超硬から高価なダイヤモンド・cBN まで、使用済みの切削工具の再研磨をオンラインで受け付けるサービスです。電話や FAX を介さず、Web 上で概算見積もりから発注まで完結できます。
ダイヤモンド・cBN などの硬質工具を含め、お手元の工具が再研磨に対応できるかは概算見積もりでご確認いただけます。標準の納期は約 3 週間、送料は一律 555 円です。工具費の見直しを検討される際は、まずは概算見積もりでお試しください。PLG 技術の詳細はPLG(パルスレーザー研磨)とはで解説しています。
よくある質問
Q. 再研磨は新品を買うより安くなりますか? A. 工具の種類・摩耗状態・再研磨の内容によって異なるため、一律にはお答えできません。一般に、材料費の高い工具ほど、新品に買い替えるより再研磨で再生したほうが工具費を抑えやすいと考えられます。まずは概算見積もりでご相談ください。
Q. 再研磨に出すのはどのタイミングがよいですか? A. 摩耗や欠損が進みすぎる前が目安です。大きく損傷してからでは削り取る量が増え、再生できる範囲も狭くなります。仕上げ面や加工精度の変化を目安に、早めにご検討ください。
Q. 納期と送料を教えてください。 A. 標準の納期は約 3 週間、送料は一律 555 円です。
参考文献・出典
- 1.日本機械学会「機械工学事典 — 工具寿命」
- 2.京都大学 OpenCourseWare「工具の摩耗と寿命」(機械加工 講義資料)
- 3.奥島啓弐・人見勝人「切削工具の逃げ面摩耗と切削力の変化」精密機械 29巻4号(1963)J-STAGE
- 4.住友電工「切削工具用コーティング技術の進化〜CVD法とPVD法〜」SEIテクニカルレビュー
- 5.OSG「再研磨・再コーティングサービス」
- 6.Oerlikon Balzers「Reconditioning of high-performance round tools」
- 7.特許庁/INPIT「金属表面の硬質皮膜形成技術(PVD・CVD・溶射法)」特許流通支援チャート