インサートの型番(呼び記号)は、どこをどう読めばよい?
インサート(スローアウェイチップ)の型番は、CCMT09T308 のように英字と数字が続いていて、初めて見るとどこで区切ればよいか分かりません。けれども並び順は規格で決まっていて、前から順に読めば、形・大きさ・厚さが分かります。
この記事では CCMT09T308 を例に、呼び記号を 7 つの記号に分けて読んでいきます。
この記事でわかることは次のとおりです。
- 呼び記号の並び順と、
CCMT09T308の読み方 - 1 番目から 7 番目までの記号の一覧と、8 番目以降の任意記号
- 型番の末尾に付くメーカーの記号の読み方
呼び記号は決まった順序で並んでいる
インサートの呼び記号の付け方は、JIS B 4120(ISO 1832 に対応)で決められています。必須の記号は次の 7 つで、この順に並びます。三菱マテリアルや京セラの技術資料も同じ順序です。
- 形状記号(インサートの外形と刃先角)
- 逃げ角記号
- 等級記号(寸法許容差)
- 溝・穴記号(取付穴と、チップブレーカ=切りくずを細かく分断するための溝や突起の有無)
- 切れ刃長さ記号(サイズ)
- 厚さ記号
- コーナ記号(コーナ半径)
内接円・刃先角・厚さ・逃げ角が、インサートのどこを指すかを図にすると次のようになります。コーナ半径は、刃先の角の丸みの大きさです。
CCMT09T308を7つの記号に分けて読む
CCMT09T308 は、次の 7 つに区切れます。
| 順番 | 記号 | 何を表すか | 読み取れる内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | C | 形状記号 | ひし形(刃先角 80°) |
| 2 | C | 逃げ角記号 | 逃げ角 7° |
| 3 | M | 等級記号 | M 級(寸法許容差の等級) |
| 4 | T | 溝・穴記号 | 一部円筒穴(片面 40°〜60°)・チップブレーカ片面 |
| 5 | 09 | 切れ刃長さ記号 | C 形では内接円 9.525 mm に対応 |
| 6 | T3 | 厚さ記号 | 厚さ 3.97 mm |
| 7 | 08 | コーナ記号 | コーナ半径 0.8 mm |
まとめると、「刃先角 80° のひし形で、逃げ角 7°、M 級、片面にチップブレーカのある取付穴付き、内接円 9.525 mm、厚さ 3.97 mm、コーナ半径 0.8 mm」のインサートです。
読み違えやすいのは次の 2 点です。
T3は 1 つの記号です。厚さ記号は厚さの小数点以下を切り捨てた値(3.18 mm なら03)が基本ですが、3.97 mm は 3.18 mm と区別するためにT3と書きます。09は「直径 9 mm」ではありません。等辺のインサートでは、切れ刃(辺)の長さの小数点以下を切り捨てた値を使います(辺の長さ 16.5 mm なら16)。同じ内接円でも、形状によって辺の長さが違うので記号も変わります。
1番目から3番目の記号
ここからの表は、JIS B 4120 の 2013 年版と、三菱マテリアル・京セラの資料で確認した主な記号です。寸法はメートル系で示します。規格は 2025 年に改正され、名称が「刃先交換インサートの呼び記号の付け方」になりました。改正後の規格が対応する国際規格 ISO 1832:2017 でも、必須の記号は同じ 7 つです。
形状記号
| 記号 | 形状 | 刃先角 |
|---|---|---|
| C | ひし形 | 80° |
| D | ひし形 | 55° |
| E | ひし形 | 75° |
| M | ひし形 | 86° |
| V | ひし形 | 35° |
| K | 平行四辺形 | 55° |
| S | 正方形 | 90° |
| T | 正三角形 | 60° |
| W | 六角形 | 80° |
| R | 円形 | ― |
ひし形の刃先角は、小さい方の角度を指します。
逃げ角記号
| 記号 | 逃げ角 |
|---|---|
| N | 0° |
| A | 3° |
| B | 5° |
| C | 7° |
| P | 11° |
| D | 15° |
| E | 20° |
| F | 25° |
| G | 30° |
主切れ刃に対する逃げ角です。N(0°)のように逃げ角のないインサートと、C(7°)のように逃げ角の付いたインサートがあります。
等級記号
内接円直径 d・コーナ高さ m・厚さ s の寸法許容差の組み合わせを、1 文字で表します。
| 等級 | d | m | s |
|---|---|---|---|
| M | ±0.05〜±0.15 mm | ±0.08〜±0.2 mm | ±0.13 mm |
| G | ±0.025 mm | ±0.025 mm | ±0.13 mm |
M 級の d・m の範囲は、内接円の大きさで変わります。
4番目から7番目の記号
溝・穴記号
| 記号 | 穴 | チップブレーカ |
|---|---|---|
| N | なし | なし |
| R | なし | 片面 |
| F | なし | 両面 |
| A | 円筒穴 | なし |
| M | 円筒穴 | 片面 |
| G | 円筒穴 | 両面 |
| W | 一部円筒穴(片面 40°〜60°) | なし |
| T | 一部円筒穴(片面 40°〜60°) | 片面 |
切れ刃長さ記号
同じ数字でも、形状が違えば大きさが変わります。主な内接円直径との対応は次のとおりです。
| 内接円直径 | C | D | V | S | T |
|---|---|---|---|---|---|
| 6.35 mm | 06 | 07 | 11 | 06 | 11 |
| 9.525 mm | 09 | 11 | 16 | 09 | 16 |
| 12.7 mm | 12 | 15 | 22 | 12 | 22 |
厚さ記号
| 記号 | 厚さ |
|---|---|
| 01 | 1.59 mm |
| 02 | 2.38 mm |
| 03 | 3.18 mm |
| T3 | 3.97 mm |
| 04 | 4.76 mm |
| 05 | 5.56 mm |
| 06 | 6.35 mm |
コーナ記号
| 記号 | コーナ半径 |
|---|---|
| 01 | 0.1 mm |
| 02 | 0.2 mm |
| 04 | 0.4 mm |
| 08 | 0.8 mm |
| 12 | 1.2 mm |
| 16 | 1.6 mm |
| 20 | 2.0 mm |
| 24 | 2.4 mm |
| 32 | 3.2 mm |
コーナ半径を 0.1 mm 単位の 2 桁で表します。コーナが円弧でない場合は 00 です。
別の型番で読み方を確認する
同じ手順で、ほかの型番も読めます。
| 型番 | 形状 | 逃げ角 | 等級 | 溝・穴 | 内接円 | 厚さ | コーナ半径 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
CCMT09T308 | C(ひし形 80°) | C(7°) | M | T | 09(9.525 mm) | T3(3.97 mm) | 08(0.8 mm) |
DCMT11T308 | D(ひし形 55°) | C(7°) | M | T | 11(9.525 mm) | T3(3.97 mm) | 08(0.8 mm) |
VBMT110301 | V(ひし形 35°) | B(5°) | M | T | 11(6.35 mm) | 03(3.18 mm) | 01(0.1 mm) |
DCMT11T308 と VBMT110301 は、どちらもサイズの記号が 11 なのに、内接円は 9.525 mm と 6.35 mm で違います。サイズの記号は、形状の記号とセットで読みます。
8番目以降の任意記号
7 つの必須記号のあとに、任意の記号が続くことがあります。三菱マテリアルの解説では、8 番目を刃先記号、9 番目を勝手記号としています。国際規格の ISO 1832:2017 でも、8 番目は刃先の状態、9 番目は切削の方向(勝手)を表す記号です。刃先記号は、刃先にホーニング(欠けを防ぐために付ける小さな丸みや面取り)があるかどうかを表します。
| 刃先記号 | 刃先の状態 |
|---|---|
| F | シャープエッジ |
| E | 丸ホーニング刃 |
| T | チャンファーホーニング刃 |
| S | チャンファーと丸の複合ホーニング刃 |
| 勝手記号 | 勝手 |
|---|---|
| R | 右 |
| L | 左 |
| N | なし |
三菱マテリアルの型番では、ホーニングの記号は省略されています(同社の解説による)。8 番目以降の記号が付かない型番もあります。
cBN や PCD を刃先に付けたインサートでは、刃先記号と勝手記号のあいだに、ホーニングの寸法を表す数字が入ることがあります。さらにハイフンで区切って、cBN・PCD の刃の形と刃数、刃の長さを表す記号を続けることもできます(ISO 1832:2017 による)。
ハイフン以降の記号
カタログや型番ページでは、CCMT09T308-KPD010 のように、ハイフンのあとに記号が続く型番をよく見かけます。ISO 1832:2017 では、メーカーが製品をくわしく表すために、ハイフンで区切って独自の記号(チップブレーカの違いや材種など)を足してよいとしています。中身はメーカーが決めるので、同じ文字列でもメーカーが違えば意味が変わり、規格の表では読めません。
当サイトの CCMT09T308-KPD010 と VBMT110301-KPD001 は、どちらも京セラのインサートで、末尾は材種の記号です。京セラの総合カタログ(2024-2026)では、次のように紹介されています。
| 材種 | 種類 | 平均粒径 | カタログでの特長 |
|---|---|---|---|
| KPD010 | PCD(多結晶ダイヤモンド) | 10 µm | 耐摩耗性と再研性のバランスの取れた汎用材種 |
| KPD001 | PCD(超微粒子) | 0.5 µm | 刃先強度が高く、耐摩耗性・耐欠損性・刃立ち性に優れる |
型番の前半で形と寸法、末尾でメーカーと材種が分かる、という読み方です。ほかの型番は型番一覧から探せます。
呼び記号を読めると役立つ場面
呼び記号が読めると、手元のインサートの形・大きさ・厚さ・コーナ半径を、カタログを開く前につかめます。型番を書き写したときの打ち間違いにも気づきやすくなります。代わりのインサートを探すときは、呼び記号が同じでも、ホルダとの組み合わせや加工内容を別に確かめる必要があります。
インサートを再研磨に出すときは、読み取った型番と材種がそのまま依頼の情報になります。伝える項目はインサートの再研磨を依頼する前に確認する 5 項目にまとめました。当社の PLG 再研磨は PCD・cBN などの超硬質工具のインサートが対象で、概算見積もりでは型番と材種から対象かどうかと概算の金額を確かめられます。
よくある質問
Q. 呼び記号は何桁で構成されていますか?
A. 必須の記号は 7 つです。T3 や 09 のように 2 文字の記号があるので、文字数とは一致しません。区切り方は「CCMT09T308を7つの記号に分けて読む」の表で確認できます。
Q. CCMT と CNMG は何が違いますか?
A. 違うのは 2 番目の逃げ角(7° と 0°)と、4 番目の溝・穴(一部円筒穴でブレーカ片面か、円筒穴でブレーカ両面か)です。形状と等級は同じです。
Q. 型番の末尾の -KPD010 のような記号は何を表しますか?
A. KPD010 は京セラの PCD 材種の記号です。規格はハイフン以降にメーカー独自の記号を足すことを認めていて、中身はメーカーごとに違うため、他社の記号はそれぞれのカタログで調べます。
Q. 同じサイズ記号でも大きさは同じですか? A. 同じとは限りません。サイズの記号が指す大きさは形状によって変わるため、「別の型番で読み方を確認する」の表のように、形状の記号とあわせて読みます。
参考文献・出典
- 1.日本規格協会「JIS B 4120:2025 刃先交換インサートの呼び記号の付け方」(2025年2月20日改正)
- 2.ISO 1832:2017「Indexable inserts for cutting tools — Designation」(JIS B 4120:2025 の対応国際規格。任意記号と補足記号の構成の確認に使用)
- 3.JIS B 4120:2013「刃先交換チップの呼び記号の付け方」本文(ISO 1832 対応・記号表の確認に使用した旧版)
- 4.三菱マテリアル「インサートの呼び記号」(技術情報/旋削用インサート)
- 5.京セラ「切削工具 総合カタログ 2024-2026 旋削用インサート」(インサート呼び記号の解説)
- 6.京セラ「切削工具 総合カタログ 2024-2026 インサート材種」(A17 PCD 材種 KPD001・KPD010 の平均粒径と特長)